校外学習型
酪農体験から国語・社会・理科・音楽・総合的な学習の時間との関連
〜八ヶ岳牧場での酪農体験学習〜
日時:平成12年6月8日(木)13:00〜17:00
場所:東京都府中市立府中第一小学校
ねらい
人間、動物、自然、三者の関係で牧場が成り立つことを実感させる。
「かかわり」の中で生きていくことの大切さを学ぶ。
実施概要
日時 2000年6月8日(木) 13:00〜17:00
場所 JA長野経済連八ヶ岳牧場
参加人数 5年生児童117名、教員8名
学習目的 ●社会科「食料生産に励む人々」
●理科「動物の発生と成長」
●音楽「八ヶ岳に行ってのイメージを曲にする」
●総合的な学習の時間及び国語「ビデオレターの作成」
●特別活動「宿泊的行事」
内容 (1)牧場見学
牧場内の散策を通して、牛、動物、農機具、草花などとのふれあい。
放牧場内の観察。
牛の牧区移動のための牛追い。

ポイント
●自然とのふれあい。●牧場の広さを知る。●農機具や機械の種類と使い方を知る。●大型動物は、自分たちの思い通りにならないことを知る。

(2)乳牛管理
フリーストール内での搾乳観察。
搾乳牛の観察。
えさの種類や食べ方の観察。
牛舎内の除糞作業・牛床の整地。
牛のブラッシング

ポイント
●牛の飼われている環境と酪農家の仕事を知る。●反芻動物の生理を知る。●牛に直接ふれて、動物の温かさを体験する。

(3)子牛とのふれあい
カーフハッチで子牛にふれ、哺乳体験をする。
子牛の行動の観察。
指を吸わせる。

ポイント
●子牛と親牛の食べ物の違いを知る。●子牛の愛らしさにふれる。●子牛の吸引力を体験する。

(4)牛の健康管理
牛の体重測定、第一胃蠕動運動音等を聴診し、健康管理を行う。
牛の体や乳房にふれる。
反芻の様子を観察する。

ポイント
●心臓や胃の動きを聞く。●牛の体温を知る。●牛に触り、動物の温かさを感じる。

(5)搾乳体験
牛の体や乳房にふれる。
手搾りの体験を行う。

ポイント
●牛乳の生産プロセスを知る。

(6)バターづくり
バターづくりの体験をする。

ポイント
●バターづくりのプロセスを知る。

(7)生命誕生
牛の凍結精液及び受精卵を顕微鏡で観察する。

ポイント
●生命誕生のプロセスを知る。●人工授精の内容を知る。
実施後の子どもたちの反応
(1)体験を通しての感想

一番印象に残ったブラッシング作業
体験前はトラックに乗って牧場内を走ることを楽しみにしていた子どもたちだったが、体験を終えて一番印象に残っていたのは、牛のブラッシングである。
最初は糞が体についている牛の毛をブラッシングすることに違和感をもち、牛に蹴られるのではないかとか、力をいれたら牛が痛がるのではないかと、おそるおそるやっていた。担当者から「もっと力を入れてごらん」と言われ力強くブラッシングを行ったところ、牛が気持ちよさそうな表情を見せた。その表情に安心したのか「なんか牛が喜んでいるみたい」と歓声をあげながら張り切ってブラッシングを行った。

つらかった牛舎内の清掃。
牛舎内の牛床のそうじ、おがくず運びで、体中がおがくずだらけになって作業をしていた。「つらかった、でも楽しかった」という感想も聞かれ、意気揚々と仕事をする姿が印象的だった。

胃や心臓の音のすごさにびっくり。
牛の体に直接ふれて、胃の音や心臓の拍動音を聴診器や直接耳で聞く。牛の大きさや音のすごさにびっくりしながらも、体の温かさにうっとりしていた。

年をとった牛のゆくえ。
年をとった牛で、健康管理を行った。担当者から牛の年齢や寿命の話を聞き、「年をとった牛はどうするの?」と質問をしたところ、「牛肉になって私たちの生きる糧になるんだよ」という答え。子どもたちの顔が少し暗くなる。「この牛もしばらくしたらそうなっちゃうのかなあ・・・。」
教室に戻ってからもその話が印象深かったのか、年老いた牛のことを盛んに話していた。生きるものは必ず死ぬことを、実感できたようだった。


(2)牧場に宛てた手紙づくり。

学校に帰ってから、全員の子どもたちが牧場に手紙を書くことになった。その一部を下に紹介するが、どの子どもも手紙の中に今回の体験で一番印象に残ったことや、体験を通して考えたこと、感じたことを具体的な言葉で表現していた。そしてその手紙を学級ごとに綴って八ヶ岳牧場に送った。なお、手紙づくりは、国語科学習の一環として行った。
<font color="00a0c6">子どもがもっている資質・能力と本題材における主な手だて</font >
○企画する力
音楽の学習においての企画する力は、自分の思いやイメージを音で表現できるように工夫することである。本題材ではイメージした音を表現できるように、リズム、音色、強弱、速さなど音楽の諸要素に着目して、作品づくりをすすめる。
思いやイメージを音で表現したいと思っているが、それをどうやって表現するかは段階をふんで指導する。
○比較する力
本題材では、音楽の諸要素(リズム、旋律、音色など)を比較して、表現の違いを感じ取り、自分の作品づくりに生かす。
また音楽の諸要素を比較することにより、自分の作品と友達の作品を聴き比べてそのよさや違いを感じ取り、鑑賞の能力も育てる。

○関係づける力
音楽の学習においては、イメージと音の表現の関係をとらえて音楽表現に生かす。
子どもたちは、簡単なリズム打ち、リズム読み、階名読みについては鍵盤学習やリコーダーの学習によってほぼ理解できているので、それを応用して自分のイメージをメロディーに表現する。
○主な学習方法
・表現したいイメージを具体的にとらえられるように、八ヶ岳移動教室の子どもたちの作文を音づくりの題材とした。
・イメージをことばで表現したり、音づくりの設計図をつくることによって、実現への見通しをもつ。
・音のイメージがふくらむように、様々な楽器を用意する。
・音楽の諸要素の特徴や効果を、視覚と聴覚で感じ取れるようにパソコンを活用する。
・音楽の諸要素を意識した表現や鑑賞ができるように授業の終わりに『聴き合いタイム』を設定し、作品の紹介や発表、意見交換を行う。また『聴き合いタイム』によって得たことを生かして、自分の作品を見直し、作品づくりに生かす。
・音楽の諸要素の特徴や効果を比較し、その違いをことばで表現する。それにより子どもが感じたことを引き出し作品づくりに生かす。
・イメージと音の表現との関係をとらえやすいように例題を用意し、子どもが感じたことを引き出しやすいようにする。
・自分のイメージと音の表現を関係づけて考えることができるように、パソコンのシュミレーションを活用する。
まとめ
今年度の八ヶ岳での酪農体験学習は、学期内に行われたこともあり体験後の学習活動を様々に組むことができた。そして、当初考えていた以上に複数の教科へ発展させることができ、国語、社会、理科、音楽及び総合的な学習の時間と5つの教科で取り組みが行えた。このようにいろいろな教科へ発展させられたということは、教科の領域固有性を越えることでもあり、また子どもたちの考える力をあらゆる教科に広げ高めていけることも可能になった。
2年続けて酪農体験学習を行ったが、回数を重ねるごとに体験の内容も充実し、それを元にした学習展開もより具体的に発展してきた。そして子どもたちにとっても、教室では学ぶことができない自らの体験をベースとした「生きた教材」として、確実に学習成果をあげている。
このような結果から見て今後は、年に数回は牧場を訪問できる地域の学校でも、積極的に授業に導入して欲しい。子どもたちの持つ感性や受ける学習方法も違うだろうし、さらに踏み込んだ内容での学習展開も期待できる。
もちろん年に1?2回しか牧場を訪問できない都会の子どもたちに対しても積極的に推進していきたい。酪農体験は何よりも珍しく感動的だろうし、めったに行けない牧場での経験であるがゆえにこれから先の彼らの生き方に大きな影響を与えるものと思われる。そしてわれわれ教師も子どもたちの学習を効果的に支援して行くために、総合的なカリキュラムづくりを再度検討して行きたい。
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